日本保育ソーシャルワーク学会設立趣意書
学会設立準備委員会
近年、社会構造・地域コミュニティの変貌や個人のライフスタイルの多様化等子どもと家庭を取り巻く環境の変化のなかで、子どもの育ちの変容や家庭の子育て力の低下が指摘されている。すなわち、前者については、基本的な生活習慣の欠如や食生活の乱れ、自制心や規範意識の希薄化、運動能力の低下、コミュニケーション能力の不足、小学校生活にうまく適応できていないなどの問題が指摘されている。また、後者については、子どもの育ちに対する理解の不足や子育ての弧立化の深まりから、過保護や過干渉、育児不安、児童虐待、乳幼児の遺棄など、子どもとの関係構築に関する問題が指摘されている。
こうした状況のなかで、保育所・幼稚園・認定こども園等保育施設においては、子ども・子育て問題の多様化・複雑化に対応するため、期待される役割・機能が拡大してきている。すなわち、保育者には、入所(園)している子どもの保育のみならず、その保護者に対し、就労状況や子どもとの関係等を踏まえた適切な支援、さらには、地域の子どもやその保護者に対する子育て支援(以下「子育て支援」という)を担う役割が一層高まっている。また、保育施設には、それぞれの特性を生かしながら、保護者に対する保育に関する指導や子育て等に対する相談・助言、情報提供、関係機関・関係者との連携等におけるソーシャルワーク機能を発揮することが求められている。
保育学界及び保育界において、子育て支援を保育施設・保育者の新たな機能・役割として位置づける保育ソーシャルワーク論が展開され始めたのは1990年代後半以降になってからである。特に子育て支援の中心に保育所が位置づけられ、保育士資格が国家資格化(法定化)される2001年前後から、子育て支援(ないし家庭との連携)、さらには、保育実践へのソーシャルワークの導入の必要性が唱えられるようになり、保育ソーシャルワークをテーマとする研究や実践も徐々に現れるようになってきている。ここでいう「保育ソーシャルワーク」とは、子どもの最善の利益の尊重を前提に、子どもと家庭の幸福(ウェルビーイング)の実現に向けて、保育とソーシャルワークの学際的領域における新たな理論と実践としてとらえられているものの、そのシェーマ(定義、内容、方法等)やシステムについて、いまだ確定したものが構築されるには至っていないのが実情である。
ここに、保育学研究における専門学会として、「日本保育ソーシャルワーク学会」を設立し、保育ソーシャルワークのさらなる発展を期して、保育ソーシャルワークに関する研究及び交流を積極的に図り、もって、子どもと家庭の幸福の実現に貢献することをめざすものである。
2013年5月18日